労働衛生 / 化学物質・皮膚保護

ゴム手袋なら何でも同じ? 化学防護手袋の選び方と外し方

「ニトリルだから大丈夫」「厚いゴム手袋だから大丈夫」では判断できません。化学物質は手袋材料を分子レベルで透過することがあり、同じ材質名でも厚さ・製品・対象物質・接触時間で防護性能が変わります。

主な対象
液体薬品・洗浄剤・溶剤等
安全情報の確認
2026-09-04

00 / 現場での判断

手袋は「材質名」ではなく、薬品 × 時間 × 使い方で決める

01先に接触機会を減らす

代替、密閉、治具、飛散しにくい方法などを先に検討します。手袋は上流対策を省略する理由にはしません。

02耐透過性を見る

SDSと手袋メーカーの耐透過性データを確認し、使用する化学物質と作業時間に合う製品を選びます。

03時間を管理する

休憩を挟んでも、手袋に付いた薬品の透過は進みます。設定した使用可能時間を「休んだからリセット」と扱いません。

04境目と外し方を見る

手袋と袖、長靴などの隙間からの流入と、汚染した手袋を外すときの再付着まで対策します。

01 / 法令

「不浸透性の保護具」は条件付きの法令要求がある

594条の2

皮膚等障害化学物質等

対象業務では、事業者が適切な不浸透性の保護衣、保護手袋、履物、保護眼鏡等を労働者に使用させる規定があります。適用除外条件も含めて確認します。

594条の3

その他の対象化学物質

皮膚・眼への障害等のおそれがないことが明らかでない化学物質では、適切な保護具を使用させるよう努める規定があります。

596条

数と状態

対象となる保護具には、同時就業人数以上を備え、常時有効かつ清潔に保持する規定があります。

597条

労働者側

対象業務で必要な保護具の使用を命じられた労働者には、その保護具を使用する規定があります。

02 / 選定

「ニトリル」「天然ゴム」だけで選ばない

  1. A
    使う化学物質を特定

    製品名だけでなくSDSの成分・組成を確認します。混合物なら主要成分だけでなく、皮膚有害性に関係する成分も確認します。

  2. B
    手袋メーカーのデータを確認

    対象化学物質に対する耐透過性、耐浸透性、必要に応じ耐劣化性を確認します。対象物質のデータがなければ製造者等へ問い合わせます。

  3. C
    作業時間を入れる

    浸漬するのか、飛沫だけか、準備・希釈・清掃まで何分接触し得るかを見ます。単純に「一日8時間着けられる」とは扱いません。

  4. D
    作業性と破損も確認

    薬品への性能が足りても、細かい操作ができず破損・誤操作につながるものでは実用になりません。機械的強度や作業性も確認します。

03 / 使用時間

見た目が無傷でも、内側へ透過していることがある

作業前 傷、孔あき、亀裂等を毎回確認します。

使用中 耐透過性等から余裕を持った使用可能時間を決め、その時間を超える前に交換します。

休憩 手袋に化学物質が付着していれば透過は進み続けます。休憩時間を差し引いて使用可能時間を延ばしません。

洗った後 内部へ侵入した化学物質は乾燥・洗浄で除去できないため、使用可能時間を超えたものを「洗ったから再使用可」としません。

二重手袋 強度等のため別の手袋を重ねても、化学防護手袋自体の設定使用可能時間は延長しません。

04 / 隙間

手袋が合っていても、袖口から入れば皮膚に届く

厚生労働省掲載の化学物質管理教材には、アルカリ性洗浄液が手袋とアームカバーの隙間から入り、衣服の下を伝って手首から脇にかけて重い化学熱傷となった事例が示されています。洗浄剤が長靴へ入り足を負傷した事例もあります。

「手袋を袖の上にするか下にするか」を全作業で一律に決めるのではなく、飛沫・液だれの方向、腕の姿勢、防護服や手袋の取扱説明書を踏まえ、薬液が開口部から衣服内へ流れ込まない組合せを確認します。

05 / 外す・交換する

作業が終わった瞬間も、まだ「ばく露中」

汚染面を触らない

外すときは、できるだけ薬品が付着した面が内側になるようにし、皮膚・衣服への再付着を避けます。

廃棄方法を確認

汚染した手袋を一般ごみとして扱ってよいとは限りません。使用した化学物質のSDS、現場の廃棄ルール、関係法令を確認します。

予備を置く

交換時期が来ても予備がなく使い続ける運用を避けます。必要な交換数を見込んで準備します。

保管で劣化させない

直射日光、高温多湿、オゾン発生機器の近くを避け、取扱説明書に従って保管します。

06 / 機械との両立

化学防護手袋が必要でも、回転工具の巻込み条件は消えない

薬品が付いた部材を電動工具で処理するなど、皮膚保護と機械的な巻込み危険が同時にある作業では、「薬品だから手袋」「回転工具だから手袋なし」のどちらか一方だけで決めません。化学物質への接触をなくす工程変更、工具の取扱説明書、手袋禁止・要求の条件を合わせて確認します。

07 / 製品選定

メーカー名より先に、製品が満たす条件を見る

以下はランキングではなく、メーカー一次情報をSafetyClaimから導いた選定条件へ照合した例です。規格適合や「ニトリル」という材質名だけで、実際に扱う薬品へ適合すると判定しません。

  1. 製品仕様で確認
    化学防護手袋としての規格適合を確認する

    実製品がJIS T 8116、ASTM F739、EN ISO 374等の化学防護手袋規格へ適合していることを公式仕様で確認する。規格名の確認だけで対象化学物質への適合を断定しない。

  2. 現場条件で確認
    対象化学物質と作業時間に対する耐透過性能を確認する

    実製品の材質・厚さ・耐透過性等のデータを、実際に扱う化学物質の組成・濃度、接触条件、作業時間と照合する。ニトリル等の材質名や規格適合だけから使用可能時間を決めない。

  3. 着用者ごとに確認
    着用者本人のサイズ適合を確認する

    製品に複数サイズがあっても、実際の着用者が試着して作業中に脱げず、必要な操作性を確保できるサイズを選ぶ。

Ansell

AlphaTec 58-335

公式仕様確認
化学防護規格
JIS T 8116:2005 / EN ISO 374-1:2016 JKLOPT / EN ISO 374-5:2016
材料
ニトリル / AQUADRI 2(メーカーのライナー素材欄)
長さ・厚さ・サイズ
長さ380mm / 掌部厚さ0.74mm / サイズ7〜11
耐透過情報
メーカー製品ページから化学薬品による手袋の推奨ガイド・耐透過性試験へ到達できる
化学防護手袋としての規格適合を確認する公式仕様で確認済み

JIS T 8116:2005、EN ISO 374-1、EN ISO 374-5への適合を公式製品ページで確認できる。

対象化学物質と作業時間に対する耐透過性能を確認する現場で確認が必要

規格、材料、耐透過情報への導線は確認できるが、実際に扱う物質、濃度、接触条件、作業時間への適合は現場ごとに照合する。

着用者本人のサイズ適合を確認する本人で確認が必要

サイズ7〜11の展開は確認できるが、本人の手への適合と必要な操作性は試着して確認する。

快適性・作業性に関する公式情報

メーカー説明発汗・濡れた環境での扱いやすさメーカーはAQUADRIによる発汗低減と長時間ドライ、逆菱形グリップによる濡れた状態と乾いた状態での把持性向上を説明している

「メーカー説明」はGROUNDによるhands-on評価ではありません。
メーカー公式仕様を確認する
Ansell

AlphaTec 04-005

公式仕様確認
化学防護規格
JIS T 8116:2005 / EN ISO 374-1:2016 JKLMPT / EN ISO 374-5:2016
材料
PVC+ニトリルコーティング / コットンライナー
長さ・厚さ・サイズ
長さ380mm / 掌部厚さ1.80mm / サイズ8〜11
耐透過情報
メーカー製品ページから化学薬品推奨ガイド・耐透過性試験を確認できる
化学防護手袋としての規格適合を確認する公式仕様で確認済み

JIS T 8116:2005等への適合を公式製品ページで確認済み。

対象化学物質と作業時間に対する耐透過性能を確認する現場で確認が必要

製品の規格・材料・耐透過情報への導線は確認できるが、実際に扱う物質の組成・濃度・接触条件・作業時間への適合は現場ごとに照合する。

着用者本人のサイズ適合を確認する本人で確認が必要

サイズ8〜11の展開は確認できるが、作業者本人へのサイズ適合と操作性は試着して確認する。

快適性・作業性に関する公式情報

メーカー説明ライナー・柔軟性メーカーは13ゲージシームレスコットンによる保護と快適性のバランス、および低温でも持続する柔軟性を説明している

「メーカー説明」はGROUNDによるhands-on評価ではありません。
メーカー公式仕様を確認する
SHOWA

727

公式仕様確認
化学防護規格
EN ISO 374-1:2016+A1:2018 Type A JKLOPT / EN ISO 374-5:2016
材料
100%ニトリル / unsupported / unlined
長さ・厚さ・サイズ
長さ330mm / 厚さ0.38mm / サイズ7/S〜11/XXL
耐薬品情報
メーカー製品ページからChemical Resistance情報・データシート・使用説明書へ到達できる
化学防護手袋としての規格適合を確認する公式仕様で確認済み

EN ISO 374-1 Type A等への適合を公式製品ページで確認済み。EN規格表示だけからJIS基準での使用可能時間を推定しない。

対象化学物質と作業時間に対する耐透過性能を確認する現場で確認が必要

化学防護規格と耐薬品情報への導線は確認できるが、100%ニトリルという材質名だけでは対象物質への適合を判断せず、実際の物質・濃度・接触条件・作業時間で確認する。

着用者本人のサイズ適合を確認する本人で確認が必要

サイズ7/S〜11/XXLの展開は確認できるが、作業者本人のフィットと操作性は試着で確認する。

快適性・作業性に関する公式情報

メーカー説明グリップ・形状メーカーはBisque表面による濡れ作業時のグリップと、ergonomic designによる快適性・精密作業性を説明している

「メーカー説明」はGROUNDによるhands-on評価ではありません。
メーカー公式仕様を確認する

08 / 根拠のある安全情報

今回の判断に使ったSafetyClaim

法令

皮膚等障害化学物質等を製造・取り扱う対象業務では、事業者は不浸透性の保護衣、保護手袋、履物、保護メガネなどの適切な保護具を労働者に使用させる必要がある。

第594条の2第1項の皮膚等障害化学物質等を製造し、または取り扱う対象業務 / 他の法令で保護具の使用が義務付けられている業務や、密閉して製造・取り扱う業務を除く
法令

皮膚や眼への障害などのおそれがないことが明らかとはいえない対象化学物質の製造・取扱業務では、事業者は適切な保護具を労働者に使用させるよう努める必要がある。

第594条の3第1項に該当する化学物質または化学物質を含有する製剤を製造し、または取り扱う対象業務
法令

第593条第1項、第594条第1項、第594条の2第1項、第595条第1項の保護具は、事業者が同時に就業する労働者数以上を備え、常時有効かつ清潔に保つ必要がある。

法令

第593条第1項、第594条第1項、第594条の2第1項、第595条第1項の対象業務では、労働者は事業者から必要な保護具の使用を命じられたとき、その保護具を使用する必要がある。

対象業務に従事し、事業者から必要な保護具の使用を命じられた場合
行政資料

化学物質へのばく露対策では、化学防護手袋だけに頼らず、より有害性の低い物質への代替や密閉化など、接触機会を減らす対策を先に検討する。

有害な化学物質への皮膚接触・経皮吸収のおそれがある作業
行政資料

化学防護手袋は「ニトリル」「ゴム」といった材質名だけで決めず、使用する化学物質、使用時間、耐透過性データ、作業性を確認して選ぶ。対象物質のデータがない場合は、組成・作業内容・作業時間を伝えて製造者等へ確認する。

化学防護手袋で皮膚ばく露を防止する必要がある場合
行政資料

化学防護手袋の実製品を選ぶ際は、JIS T 8116、ASTM F739、EN ISO 374等の化学防護手袋規格への適合を確認する。規格ごとに耐透過性能の評価条件が異なるため、規格名だけで対象化学物質への使用可能時間を決めない。

化学防護手袋の具体的な製品を選定する場合
行政資料

化学防護手袋は材質名だけで性能を一般化せず、実際に採用する製品の材料・厚さ・耐浸透性能・耐透過性能を確認し、取り扱う化学物質、作業内容、作業時間に対して十分かを判断する。

化学防護手袋で皮膚ばく露を防止するため具体的な製品を選定する場合
行政資料

化学防護手袋は作業者の手に合うサイズを選ぶ。大きすぎる手袋は作業中に脱げて化学物質が皮膚へ直接触れるおそれがあるため、複数サイズを試着して適合を確認する。

化学防護手袋を着用する場合
行政資料

化学防護手袋は着用するたびに、傷、孔あき、亀裂などの外観異常や孔あきがないか確認してから使用する。

化学防護手袋を着用する場合
行政資料

化学防護手袋は耐透過性などの科学的根拠から作業に余裕のある使用可能時間をあらかじめ定め、その時間を上限として交換する。休憩や作業中断をしても、付着した化学物質の透過が進むため使用可能時間は延びない。

化学物質が化学防護手袋へ付着する可能性がある作業
行政資料

使用可能時間を超えた化学防護手袋は、乾燥や洗浄をしても内部へ侵入した化学物質を除去できないため再使用しない。また、別の手袋を重ねても化学防護手袋自体の使用可能時間を延長した扱いにはしない。

使用可能時間を管理して化学防護手袋を使用する場合
行政資料

化学物質の飛沫や垂れがある作業では、手袋そのものの性能だけでなく、手袋と袖・アームカバーの境目、長靴の開口部などから薬液が衣服内へ入り込む経路も確認する。

液体化学物質の飛沫・垂れ・流れ込みが起こり得る作業
行政資料

汚染した化学防護手袋を外すときは、付着した化学物質が皮膚や衣服に触れないよう、できるだけ汚染面が内側になるように外し、取り扱った化学物質のSDSや法令等に従って廃棄する。

化学物質が付着した可能性のある化学防護手袋を外す場合
行政資料

化学防護手袋は交換できる予備を用意し、保管時は直射日光・高温多湿を避け、オゾンを発生する機器の近くに置かない。

化学防護手袋を事業場で使用・保管する場合

09 / 根拠資料

確認した資料と場所

  1. 労働安全衛生規則第594条の2第1項 / 確認日 2026-09-02
    原典を確認する
  2. 労働安全衛生規則第594条の3第1項 / 確認日 2026-09-02
    原典を確認する
  3. 労働安全衛生規則第596条 / 確認日 2026-09-02
    原典を確認する
  4. 労働安全衛生規則第597条 / 確認日 2026-09-02
    原典を確認する
  5. 化学防護手袋の選択、使用等について(平成29年1月12日 基発0112第6号)第1 1「全体的な留意事項」 / 確認日 2026-09-03
    原典を確認する
  6. 化学防護手袋の選択、使用等について(平成29年1月12日 基発0112第6号)第1 2「化学防護手袋の選択に当たっての留意事項」 / 確認日 2026-09-03
    原典を確認する
  7. 皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル 第3版第3章「皮膚障害等防止用保護具選定のためのリスクアセスメント」・第4章「化学防護手袋の選定と使用」 / 確認日 2026-09-03
    原典を確認する
  8. 皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル 第3版第4章 4.3.4「製品の性能確認」①規格 / 確認日 2026-09-03
    原典を確認する
  9. 皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル 第3版第4章 4.3.4「製品の性能確認」②材料・③耐浸透性能・④耐透過性能 / 確認日 2026-09-03
    原典を確認する
  10. 皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル 第3版第4章 4.4.1「使用前の留意点」2「サイズ、アレルギーの確認」 / 確認日 2026-09-03
    原典を確認する
  11. 化学防護手袋の選択、使用等について(平成29年1月12日 基発0112第6号)第1 3(1)〜(3)「化学防護手袋の使用に当たっての留意事項」 / 確認日 2026-09-03
    原典を確認する
  12. 自律的な管理の進め方 ― 洗浄剤を例として ―p.13〜14「洗浄剤に起因する災害」「食品製造業・飲食店における洗浄剤の災害事例」 / 確認日 2026-09-03
    原典を確認する
  13. 化学防護手袋の選択、使用等について(平成29年1月12日 基発0112第6号)第1 3(4)「化学防護手袋を脱ぐとき」 / 確認日 2026-09-03
    原典を確認する
  14. 化学防護手袋の選択、使用等について(平成29年1月12日 基発0112第6号)第1 4「化学防護手袋の保守管理上の留意事項」 / 確認日 2026-09-03
    原典を確認する